やかなステージで演奏する演奏家の姿をみて憧れを抱いている人は多くいると思います。料理人になりたければ調理師免許の取れる専門学校へ、美容師になりたければ美容専門学校へとその後の進路も明確ですが、音楽大学に進学すれば演奏家になれるのか?と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか?
本記事では、演奏家の定義から活動方法、必要なスキルまで徹底的に解説します。
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フリーランス演奏家とは?
フリーランス演奏家とは、オーケストラや公務員音楽隊など雇用制の楽団に所属していない演奏家を指します。ソリストからカルテット等のグループで活動している人まで様々です。
演奏家と名乗るために必要な資格は特になく、コンクール入賞歴があるような実力の人から修行中の方までレベルも様々です。音楽大学を卒業して演奏活動を続ける人の殆どがフリーランスとなります。
プロのオーケストラや吹奏楽団などは、欠員が出ない限り募集がないので、団員募集のチャンスを待ちながらフリーランスの演奏家として経験を積む人も多くいます。
フリーランス演奏家の仕事内容
フリーランス演奏家の仕事内容に明確な定義はなく、演奏家の数だけ仕事の種類があると言えます。ソリストとしての活動の他にも、プロオーケストラのエキストラとして活動する人や、楽器の選定、最近ではYouTuberとして活躍している方もいます。
一人ひとりが自分の個性や強みを生かして自由に活動できる点はメリットですが、演奏活動だけで生計を立てることができている演奏家はほんの一握り。収入が安定しない点はデメリットと言えます。
多くの演奏家が飲食店等のアルバイトや楽器の講師などを掛け持ちしていますが、アルバイトの求人は30代から激減するため、そこで経済的に行き詰まってしまう人も多いようです。
演奏のレベルや経歴を問わず、誰でも演奏家として活動することは可能ですが、才能がないと感じたら身を引くタイミングも重要と言えます。
フリーランス演奏家の条件として音大卒は必須?
前述の通り、音楽大学を卒業しなくても、フリーランスの演奏家として活動することができますが、音楽大学を卒業してからフリーランスの演奏家として独立するのが一般的です。
なぜ、音楽大学を卒業してからフリーランスの演奏家になる人が多いのか、その理由について解説します。
①演奏技術を磨くため
演奏家としてお客様に感動を与える演奏をするためには、クラシック音楽に関する様々な知識や技術、表現力を身につける必要があります。音楽大学で師事する先生から様々な技術を盗んだのち、フリーランスの演奏家として独立するのが一般的です。
②生き残るための経歴作り
クラシック音楽の世界は需要に比べて供給が多いため、生き残るためには他者との差別化が必要となります。たとえば、コンクールの受賞歴や有名な先生に師事していた経歴などがある方が有利です。このような理由からも音楽大学を出ておく方が良いと言えます。
③人脈の形成
クラシック音楽の業界は、音楽大学で師事していた先生や先輩方から仕事をいただくことも多く、人脈がとても重要です。フリーランスの演奏家として生計を立てることを目標とするならば、音楽大学への進学は必須と言えます。
上記のような理由から、音楽大学を卒業した方が良いと言えますが、音楽大学に進学するには理系学部以上の学費がかかります。経済的に音楽大学への進学は難しいけれど演奏家として活動したいという場合、特に経歴がなくてもYouTubeで演奏を公開したり自主公演を開くことは可能です。
このような活動だけで生計を立てることは難しいですが、一般企業に就職してメインの収入を得ながら、副業で演奏家を続けていくことはできると思います。
家庭の状況や自分のスキルなどを加味して、自分に合った活動方法や進路をみつけることをおすすめします。
音大では教えてくれない演奏家に必要なスキル
演奏家になるために必要なスキルは演奏技術だけではありません。フリーランスの演奏家=個人事業主となるので、経営に関するさまざまなスキルが必要となります。
現状、音楽大学ではこのような講義を行っている学校が少ないので、フリーランスの演奏家を目指している方は、独学で学んでおくことをおすすめします。
ここでは、演奏家になるために必要なスキルを解説します。
演奏技術
演奏家は演奏という商品をお客様に提供し、その対価として報酬を得ている事になります。なので言うまでもありませんが、音楽大学卒業相当の演奏技術は必須です。
前述のとおり、ライバルが多いため、その中で生き残るためには他者との差別化が必要となります。大学在学中に、コンクールの受賞歴や有名な先生に師事していた経歴などの実績を作っておくことが成功のカギと言えます。
自己プロデュース力
フリーランスの演奏家として仕事を獲得するためには、「この人に仕事を頼みたい」と思ってもらえるような、”他者にはない自分の売り”を見つけて自分を知ってもらう努力をすることも大切です。
前述のとおり、コンクールの受賞歴や有名な先生に師事していた経歴などの実績を自分の売りにしていくのが王道ではありますが、それができるのはほんの一握りの演奏家のみです。
音楽療法の資格を取る、保育や介護の資格を取るなどして組み合わせてみるのも良いかもしれませんし、アニメソングや映画音楽など何かに特化してみるのも良いかもしれません。
懐に入り込むのが得意な人でしたら、人脈を広げて仕事をもらうのも一つの戦略です。
自分の売りを見つけるまでは、選り好みせずにいただいた仕事や思いついたアイディアをひたすら実行してみることも必要です。
マーケティング
マーケティングとは顧客のニーズを満たすために企業が行う活動の総称です。わかりやすく言うと、ブログやSNSでファンを増やしたり、コンサートの集客をすることがこれにあたります。ブログのアクセス数やいいねの数から、ニーズを定量的に把握できるので、よりお客様に喜んでもらうコンサートを企画するために役立つ必須スキルです。
ビジネスマナー
ビジネスマナーとはビジネスにおける相手への”思いやり”です。ビジネスの世界は、年齢・性別・経験・価値観の異なる様々な人たちで構成されているため、信頼関係を構築するための共通言語としてビジネスマナーが重視されています。
前述のとおり、演奏家の仕事は人と人とのつながりからいただくことも多いものです。フリーランスの演奏家として活動していく中で、企業や自治体主催のイベントでの演奏依頼を受けることもあると思います。
演奏技術はもちろん重要ですが、”気持ちよく挨拶する”、”時間を守る”、”清潔感のある身だしなみを心がける”など、「この人と仕事をしたい」と思ってもらえる人間性も成功のカギとなります。お客様(=イベントの主催者)に不快な思いをさせず円滑にコミュニケーションを取るために、必要最低限のビジネスマナーを身につけておきましょう。
コミュニケーション
フリーランスの演奏家は、自分で能動的に仕事を取ってくる必要があるので、コミュニケーション能力は必須です。たとえば、音源や企画書を作って、コンサートホールや企業に営業をかけたり、誰かから仕事の依頼が来た時も、漠然とした要望からニーズをくみ取って対応する必要があります。
性格的に難しいと思う人もいるかも知れませんが、コミュニケーション能力は訓練することで身につけることが可能です。本やYouTubeでもテクニックが公開されているので、学んでみることをおすすめします。
税金やお金の知識
フリーランスの演奏家と言っても、まずは趣味や副業程度から開始して徐々に音楽の仕事が増えていくことが一般的だと思いますが、演奏活動等の収入が20万円を超えた場合、税金面で考えると個人事業主になった方がメリットがあります。
個人事業主になると楽器の購入や修理代なども経費として計上できるので、無駄に税金を納めて自分が損しないためにもお金の知識は大切です。
また、演奏会を開く際に
赤字では仕事とは言えません。趣味ではなく仕事として音楽を続けていきたいのであれば、お金について勉強し収支を見直すことも必要です。
まとめ
覚悟を決めれば誰でもなれるフリーランスの演奏家。フリーランスの演奏家は誰一人として同じ仕事内容ではなく、演奏家の数だけ仕事の種類があります。一度きりの人生ですので、後悔のないように自分に合った方法で活動してみてはいかがでしょうか。
そんなに気軽に演奏家を名乗られてはクラシック音楽の品格が下がるという声も聞こえてきそうですが、○○編集部の個人的な意見としては、服にもハイブランドとプチプラブランドが存在するように、料理にも高級レストランとファーストフードがあるように、クラシック音楽ももっと沢山の人々が気軽に聴きに行け”プチプラ”が存在しても良いのかなと思います。
成功できるのはほんの一握りということも念頭に置き、諦めた後の人生をどう生きるかを考えてリスクヘッジもしておくと大胆に行動できるかもしれません。